転職の準備

応募前に、経験と確認事項を整理する。

職種名や学習項目を増やす前に、すでに行った仕事を具体的にし、次に作るものと面談で確かめることを分けます。

AI関連職に移るとき、多くの人が「機械学習をどこまで勉強すればいいか」から考えます。しかし国内12社の求人票を読むと、必須要件に並んでいるのは機械学習の理論より、作ったものを本番で動かし続けた経験でした。

以下は2026年9月10日から11日にかけて、各社の採用ページで確認した必須要件をもとに整理したものです。出典はAIエンジニアとFDEの給与表に、求人ページのURLと確認日つきで掲載しています。

求められる実務経験の年数

12社の必須要件を並べると、年数の指定は幅が広く、記載しない求人もありました。年数より「何をどこまで担当したか」で条件を書く求人が目立ちます。

指定された年数記載を確認した企業補足
年数の記載なしベガコーポレーション、KINTOテクノロジーズ、マネーフォワード代わりに具体的な実装経験や担当範囲を条件にしています。
1年以上InsightX、ビズリーチInsightXはWebアプリケーション開発、ビズリーチはDockerによるプロダクト開発の経験です。
2年以上東京エレクトロン九州研究開発の経験年数として指定しています。
3年以上GROWTH VERSE、ジーニー、ELYZA、ビズリーチ最も多い指定です。Python、機械学習、エージェント開発など対象は企業で異なります。
4年以上Anthropic(ロンドン拠点)技術的かつ顧客と向き合う職務経験として指定しています。
5年以上ソフトバンク、BuySell TechnologiesBuySellはPoCから本番運用まで一貫してリードした経験に限定しています。

名前が挙がった技術

機械学習の理論より、動くものを作って運用する技術のほうが多く挙がりました。既存の開発経験がそのまま該当する項目が含まれます。

挙がった内容記載を確認した企業補足
Pythonビズリーチ、ELYZA、ベガコーポレーション最も多く挙がった言語です。ただし「Pythonが書ける」ではなく、機械学習ロジックの実装やデータ解析の文脈で指定されています。
DockerとKubernetesビズリーチ、東京エレクトロン九州AI固有の技術ではありません。既存のクラウド運用経験が直接あてはまります。
LLM APIを使った製品開発ベガコーポレーション、KINTOテクノロジーズ、マネーフォワードモデルを作る側ではなく、既存モデルを製品に載せる側の経験です。
SQLによる大規模データ抽出ベガコーポレーションBigQuery等での抽出と特徴量エンジニアリングを挙げています。
コーディングエージェントの活用KINTOテクノロジーズClaude Code等を使ったプロトタイプ構築経験を必須に挙げています。ツールを使えること自体が要件になった例です。
Transformerの実装と分散学習シンカ数十から数百GPU規模の分散学習経験です。モデルを作る側の求人に限られます。

技術以外で問われること

実装力だけを条件にしている求人は少数でした。要件が固まる前の場面に関わった経験が、繰り返し条件に挙がっています。

挙がった内容記載を確認した企業補足
顧客やビジネス側との直接対話による課題発見マネーフォワード、ソフトバンク、アンドパッド、Anthropicマネーフォワードは「課題発見から実装までの一気通貫」と表現しています。
PoCから本番運用、精度改善までの一貫した担当BuySell Technologies作って終わりではなく、動かし続けて改善した経験を求めています。
プリセールスまたは導入コンサルティングアンドパッドITソリューションの導入側の経験を必須にしています。

給与はどのくらいか

12社のうち11社が給与を公開していました。年額で示す求人と月額で示す求人が混在するため、単位をそろえずに示します。当サイトが換算した数値は含みません。

年額で示していた7社
450万円から1,700万円の範囲でした。うち1社は下限1,000万円で上限の記載がありません。最も低い下限は450万円(東京エレクトロン九州の予定年収)、最も高い上限は1,700万円(GROWTH VERSE)です。
月額で示していた4社
基本給で月25万円台から142万円台でした。固定残業代を別に記載する求人があり、月額だけでは手取りの前提が変わります。
非公開の1社
「経験、能力等に応じて個別に決定します」と記載し、金額を公開していません。

いずれも応募者の経験や役割によって決まる範囲の上限と下限であり、提示額ではありません。同じ職種名でも、モデルを作る側の求人と製品に載せる側の求人で水準が異なります。企業別の内訳はAIエンジニアの給与表とFDEの給与表にあります。

面談で問われること

以下は、実際の求人票に書かれていた必須要件から、当サイトが想定した質問です。実際の面談で問われることを保証するものではありません。答え方の正解を示すものでもなく、要件が何を確かめようとしているかと、準備しておく材料を整理しています。

求人票の要件PoCにとどまらず、本番環境へのデプロイ、実運用、精度改善まで一貫してリードした経験記載を確認した企業:BuySell Technologies

PoCを本番化するとき、最も大きな障害は何でしたか。どう解決しましたか。

何を確かめようとしているか:デモを作れることと、動かし続けられることを区別しています。運用フェーズの判断を自分で下したかを見ています。

準備しておくこと

  • 本番化を止めかけた具体的な制約を1つ選ぶ。データ品質、権限、速度、コストなど
  • その制約に対して何を測り、どの案を採り、何を捨てたかを順に説明できるようにする
  • 本番後に発生した問題と、その対応を1件用意する

求人票の要件コーディングエージェントを活用したプロトタイプ構築経験、生成AI・AIエージェントを業務に定着させた経験記載を確認した企業:KINTOテクノロジーズ

AIエージェントを業務で使えるようにするために、何を設計しましたか。

何を確かめようとしているか:作って見せた経験ではなく、人が日常的に使う状態まで持っていった経験を確かめています。

準備しておくこと

  • エージェントに許可した操作と、許可しなかった操作を分けて説明できるようにする
  • 失敗したときに人が介入する導線をどう設計したかを用意する
  • 使われなくなる要因をどう潰したかを1件挙げる

求人票の要件事業部門・ビジネスサイドとの直接対話を通じた課題発見から実装までの一気通貫経験記載を確認した企業:マネーフォワード、ソフトバンク、アンドパッド

相手の要望と、実際に解くべき課題が食い違った経験はありますか。

何を確かめようとしているか:言われたものを作る立場か、課題を定義する立場かを見ています。FDEの求人で特に多く問われる領域です。

準備しておくこと

  • 要望どおりに作らなかった判断を1件選ぶ
  • どの事実を根拠に方針を変えたか、誰とどう合意したかを説明できるようにする
  • 合意した成功基準と、それを誰が確認したかを用意する

求人票の要件精度改善、評価、生成AIプロジェクトの実装経験記載を確認した企業:ELYZA、BuySell Technologies

AI機能の品質が下がったことに、どうやって気づきましたか。

何を確かめようとしているか:評価の仕組みを持っているかを確かめています。「体感で気づいた」と答えると、運用設計の経験が無いと受け取られます。

準備しておくこと

  • 評価データをどう作ったか、何件で何を判定したかを説明できるようにする
  • 変更前後を比較した具体例を1件用意する
  • 品質が落ちたときに止める条件を決めていたかどうかを正直に整理する

求人票の要件KubernetesやDockerでの生成AIモデルのデプロイと運用記載を確認した企業:東京エレクトロン九州、ビズリーチ

AIを使う機能の、速度とコストをどう管理しましたか。

何を確かめようとしているか:AI固有の知識ではなく、既存のクラウド運用経験を確かめています。開発経験者が最も答えやすい領域です。

準備しておくこと

  • 観測していた指標と、その閾値を説明できるようにする
  • 負荷や障害に対して行った制御を1件挙げる。タイムアウト、再試行、流量制限など
  • コストが増えたときに何を変えたかを用意する

求人票の要件Transformerの実装経験、数十から数百GPU規模の分散学習経験記載を確認した企業:シンカ

モデルそのものを扱った経験はありますか。

何を確かめようとしているか:モデルを作る側の求人でのみ問われます。この経験が無いなら、その求人は対象が違うと判断する材料になります。

準備しておくこと

  • 無理に当てはめない。経験が無ければ「使う側の経験です」と分けて答える
  • 応募先がモデルを作る側か使う側か、求人票の必須要件で事前に判断しておく
  • 使う側の求人であれば、この質問は問われないことが多い

応募までにやること

1. 経験を実績として書き出す

担当した機能名ではなく、誰のどの課題に対し、何を設計・実装・運用したかを整理します。技術、データ、顧客との調整、品質確認を一つの経験に混ぜず、事実として分けます。

数値がある場合も、採用可能性を示す数値にはしません。自分が確認できる利用状況、障害対応、導入範囲などを、そのまま残します。経験を整理するページは端末内で完結し、登録は不要です。

2. 小さなAI実装の証拠を作る

生成AIを呼び出すだけでなく、入力、失敗時の扱い、評価、ログを含む小さな実装を完成させます。既存モデルを製品に組み込む仕事と、モデル研究開発は別の経験として扱います。

何を作るかは学習ロードマップで、求人の必須要件から逆算して整理しています。

3. 面談で前提を確認する

営業・マーケティングの仕組みを作る仕事も検討するなら、GTMエンジニアの仕事内容で担当範囲と経験の接点を確かめてください。

求人例は個別企業の情報です。職種名、必須条件、出社や顧客訪問、評価方法、担当範囲を面談で確認し、自分の経験を無理に当てはめません。各職種ページに、面談で確認する質問をまとめています。

求人の掲載状態、応募条件、紹介サービスの取扱いは、必ず移動先の公式情報で確認してください。転職相談先では、各サービスの対象者を公式サイトで確認した内容で比較しています。